声神様貰い


トオルと声神様   投稿者:ジコマン   投稿日:2000/10/20(金)04時42分02秒   ■   ★ 

       五月十日
       山崎徹は教室の外を眺めている。
       今日もよく晴れた、いい天気だった。
       「こういう日は川原かなんかでのんびり寝っ転がって、日ごろの疲れを癒す
      のが正しい一日の使い方だと思うんだけどなぁ。なんで俺はこんなとこに拘束
      されてんのかなぁ。」
       徹は、誰にも聞こえないよう、小声で不満を漏らした。
       ずっと青い空を見つめていると、細い糸のようなものが見えることがある。
      徹はこれこそ、自分を救うために天から垂らされた『蜘蛛の糸』ではないかと
      考えていた。そして、自分なりに『声神様』という呼び名をつけていた。
       実際には、眼球についた細かい傷や汚れであって、本当に空にそのような糸
      状のものが浮いているわけではないのだが。
       授業中、ノートを取るわけでもなく、かといって隠れて漫画を読んだり、携
      帯をいじったりするでもない徹にとっての唯一の楽しみは、声神様を見つめる
      しかなかったのだ。最初は授業中のちょっとした楽しみだったのだが、次第に
      休み時間すらも声神様を見つめることに費やすようになり、学校に居る間、ほ
      とんど誰とも話すことはなくなっていた。
       「おい、山崎。」
       相変わらず声神様を目で追っていた徹は、自分が呼ばれたことに気が付かな
      かった。
       「山崎!さっきから無視しやがって。この野郎!こっち向きやがれ!」
       声の主は徹の嫌いな大田というぶよぶよの木偶の坊だった。
       大田はついに業を煮やし、徹に殴りかかった。
       止める人間は誰一人居なかった。
       三発殴られて、徹はやっと不快そうに振り向いた。
       「……何?」
       今はじめて気付いたというような素振り(というかまさにその通りなのだが)
      の徹に、大田はもう一発拳をぶつけた。
       「いてぇなぁ。なんだよ。」
       大田の怒りは収まらなかったが、このままこのヘンテコな野郎を殴っていて
      もしょうがないことに気付き、用件だけを手短に伝えた。


  投稿者:ジコマン   投稿日:2000/10/20(金)04時44分13秒   ■   ★ 

       昼休み、徹は職員室にいた。
       「お前、なんで呼び出されたかわかってるか?」
       担任の安田が聞いた。
       「いえ、わかりませんけど。」
       即答だった。
       「おまえなぁ、少しは考える素振りを見せたらどうなんだ。仮にも真実にも
      お前は教師であるところの俺に呼び出しを食らっているわけだ。その状況なら
      少しは萎縮して見せたり、気を使ったり、自分をよく見せようと努力したり…
      …まぁ、そんなことを言うために呼び出したんじゃないから今回はこのくらい
      にしておくが……。」
       実に回りくどい言い方だった。徹はコイツも嫌いだった。というか人間とい
      う生物全てを嫌悪していた徹に“好きな人間”なんて矛盾した存在は端からい
      なかったのだが。
       「何を黙っているんだ。黙って静かにしていれば何でも巧くいくと思ったら
      大間違いだぞ。これからはオリジナリティとキャパシティとトリニティの時代
      だ。黙ってるだけじゃ国際化はできないんだよ。お前の将来の夢であるところ
      のフランス暮らしだって水泡に帰すことになりかねないんだぞ。わかってるの
      か?事は重大なんだ。急を要するんだ。お前も難民になりたいのか。」
       「……ところで用事はなんですか。」
       「おおそうだ。危うくお前のペースに飲まれるところだった。危ない危ない。
      ……ンー、コホン。今日お前を呼び出したのは他でもない。この前のテストの
      ことだ。なんだあのミミズがのたくったような字というか、模様というか、絵
      というか……とにかく。あれはどういうことだ。かろうじて読める文字といえ
      ば“声神様”だかなんだかって……。ヘンな宗教に入ってるわけじゃないだろ
      うな。それともクスリかなんかか?そんなもんはうちの学校じゃ認められてな
      いぞ?わかってるだろうな?」
       「はい、とくにそういうことはしていません。」
       徹はそれだけ言うと、きびすを返して職員室から出て行った。

       その日の午後、徹の死体が学校の屋上で発見された。
       外傷もなく、ただの抜け殻のようだった。



夏深とデンジ   投稿者:ジコマン   投稿日:2000/10/26(木)17時46分14秒   ■   ★ 

       5月16日

       深夜、七瀬夏深はハッと目を覚ました。
       枕もとの目覚し時計を確認すると、ちょうど午前3時だった。
       体中にじっとりと汗をかいている。
       夏深はここの所ずっと不眠症に悩まされていた。
       それは自分にもよくわからない不思議な極彩色の夢によるものであったので、
      解決策すら見つけ出せないでいた。つい最近、叔父さんがそんなことを言い出
      して、そのままおかしくなってしまったこともあり、不安は募るばかりである。
      家族にだって相談はできない。
      『早く精神病院に行って来なさい』と一蹴されて終わるに違いない。もしかし
      たら、打ち明けたら最後、そのまま病院に連れて行かれるかもしれない。そん
      なところの生活、考えただけでぞっとする。
       『いい加減、なにかクスリにでも頼ろうかなあ。』などと考えながら、気分
      転換にベランダに出てみると、街は不夜城という言葉を彷彿とさせるほど、相
      変わらずの明るさであった。夏深の家の周りは特に繁華街と言うわけでもなか
      ったが、側にカラオケボックスやファミレス、コンビニ、バッティングセンタ
      ーなどが建ち並んでいて、深夜になってもほとんど星空を確認できることはな
      かった。それほどに明るかったのだ。
       「でんこちゃん怒るかなあ。くすくすくす。」
       傍から見るとかなり危険な様子だったが、本人はもちろんそんなこと構うは
      ずもなく、さらに思考を飛躍させていく。
       「でも、でんこちゃんだって日本の電力の過剰消費があるから利潤が上がる
      んだよね。なんだかんだ言ったって皆と一緒じゃない。自分の事しか考えてな
      い。うぅん。悪い事じゃないよ。皆結局自分の事しか考えてないんだから。あ
      たしだって法律もなんもない世界だったら、片っ端からあのツマラナイ人たち
      を皆殺しにしてやるんだから。この世の中にあたし独りぽっちになったってい
      い、あんな迎合するだけしか能がない人たちだったら、
      むしろ居ない方がまし。居るだけ無駄よ。資源の無駄使いよ。本当に、死んで
      しまえばいいのだわ。」
       「プッ、そんな弱肉強食の世の中だったらお前が真っ先に殺されるだろうに。
      ケラケラケラ。」
       「フフフ。言われてみればそうだった。弱肉強食は駄目ね。あたしが生き残
      れないもの。」
       夏深はそこでふと気付く。自分は今独りのはずなのに、誰と話をしているの
      だろう。辺りを見回してみても誰も居ない。
       「あんた誰よ。」
       誰に話し掛けるわけでもなく、今までの姿勢を維持したまま、自分の周りの
      どこかに居るはずの何かに語りかける。
       「誰だっていいじゃねぇか。ちょうど話し相手が欲しかったんだろ。」
       姿の見えない人間(?)に話し掛けられるのは誰にとっても、もちろん夏深
      にとっても気分のいいものではない。どうあっても姿を見つけ出してやろうと、
      躍起になってキョロキョロしてみた。ベランダの手すりの裏側も、エアコンの
      ファンの中も、排水溝の中も、雨どいの上も、パンツの中も、とにかく思いつ
      く限り全部見渡した。でも、誰も居なかった。
       そうしてもう一度、
       「誰だっていいじゃねえか。」
       という声。
       夏深は目覚めたときよりもより気味が悪くなったので、おとなしく部屋に戻っ
      て寝なおす事にした。
       しかし、じんわりとした生暖かい空気、なんと表現したらいいのか適切な言
      葉は思い浮かばないが、『声の気配』とでもいうようなものがずっと後をつい
      てきた。
       部屋にまでついて来られては大変だと思った夏深は、とっさに階段を下りて
      家の外に向かった。部屋に行くのと、外に出るのでなにか大差があるわけでは
      なかったが、夏深は気が動転していて、そんなことを冷静に考える余裕はなかっ
      たのだ。
       玄関で靴を履いてる間も
       「どうした。急用か。」
       などと呑気に声をかけて来る。靴紐を結ぶ手が震えてきた。この姿を見せな
      い声の主はなんなのか、何の目的で突然自分のもとに来たのか。考えれば考え
      るほど分からなくなる。そして恐怖も増していく。
      どうしたらいいのか、打開策は浮かばないままだったけど、とにかくこの場か
      ら離れたくて、家を出た。
       玄関を出ると、余計に声が大きくなったような気がした。失敗した。そう思っ
      た。しかし、どうしても身体が家に戻ることを拒んでいて、もう一度家の中に
      戻ることはできなかった。
       そして、ついにどうにもこうにも耐えられなくなった夏深は、家の前の1本
      道を全速力で走りだした。
       とにかく、この、得体の知れない「声」を振り払いたかった。


夏深と夏深   投稿者:ジコマン   投稿日:2000/10/31(火)15時26分42秒   ■   ★ 

       5月16日朝
       
       夏深は家の近所の公園で目を覚ました。
       「あれえ?公園で寝た覚えなんてないのにい……。」
       ボーっとした頭でなんとかここまでの事柄を整理しようとする。
       「……あたし、夜中にまた目が醒めちゃって、それでベランダに出て、それ
      からそれから……。」
       そこでふと思い当たる。
       『自分は気が狂いそうになりながら家を出て、そのまま全力疾走したんだ。』
       昨晩の出来事が脳に蘇ると、同時に不安がむくむくと鎌首をもたげた。
       「昨日の声……。」
       耳をそばだててみるが、声は聞こえない。まだ頭の整理がついていなかった
      が、とにかく「声」が聞こえなくなっていることに気付くと、嬉しくて笑いが
      止まらなかった。冷静に考えれば、あの声の主が夏深をぬか喜びさせようとし
      ているか、はたまた気まぐれに側を離れているか。いくらでも不安要素はある
      のだが、今の夏深にそこまでの冷静さはなかった。いや、それよりも昨日の事
      実を受け入れたくない思いでいっぱいであった。
       「あはは、そんな変なことあるわけないじゃない。姿の見えない何かに話し
      掛けられたなんて。くすくす。くすくすくす……。あははは……あははははは
      ははははははははははははははははははははははははははははははははははは
      はははははははははははははははははははははははははははははは!ばっかみ
      たい!アタシバッカミタイ!アハハハ、アハ、バッカミタイ!!」
       
       帰り道、夏深は家を出てから公園で目を醒ますまでの空白の時間の事を考え
      てみたが、さっぱり思い出すことはできなかった。とにかく、夏深は声が聞こ
      えなくなったことに浮かれていて、というか、声が聞こえなくなったことによ
      り、昨日の出来事も急激に色褪せてきていて、この際そんなことはどうでもよ
      かった。
       『声が聞こえない』それだけで十分だった。
       
       5月16日夜

       「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……。」
      夏深は浄霊センターに向けて走っている。一刻も早く呪縛から逃れたかった。
      『声』は消えてはいなかった。昼はなりを潜めていたが、夜になるとまた声が
      聞こえるようになったのだ。家族はまだひとりも帰ってきていない。もはや夏
      深は半狂乱である。この『声』が一般に言う幽霊と言うものの仕業なのか、未
      来人がタイムマシーンでこの冴えない引きこもりの女子高生をイタズラにきた
      のか、宇宙人がこのか弱い生物をからかっているのか、そんなものはどうでも
      よかった。すがるものがあれば何にでもすがりたかった。だから家から一番近
      くて、一番インチキ臭い浄霊センターに向かっている。すがれるものならなん
      でもいい。とにかく、助けて欲しかった。
       「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……。」
       いくら走っても景色は変わらない。
      夏深はもどかしさと焦りから、足を絡ませ何度も転んだ。
      擦り傷は次々と増えていったが、そんなものに構う余裕はなかった。
       「早く、速く!!」
       「どうした?何をそんなに急いでいる。」
       「くッ!?」
       「俺は何もお前をどうにかしようってんじゃねえ。落ち着いて話を聞けって。」
       「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいウルサイっ!!」
      夏深は最後の力を振り絞って、さらに速度を上げる。
       「ウルサイウルサイウルサイウルサイ」
       『声』が聴こえないように、大きな声で叫びながら走った。



繋ぎ   投稿者:ジコマン   投稿日:2000/12/30(土)00時41分37秒   ■   ★ 

       電波とか気狂いとか、いくつも呼び方はあるけれど、もっと昔、電波と
      かそういう呼び名がなかった頃はなんて呼んでいたか知っているかい?
       そう、狐憑き。それともう一つ、声神さん貰いとかって呼んでいたんだ。

       声って言うのはね、本当は人間達が発している以外にも存在して、いつ
      も空から降り注いでいるんだ。人間達は声を使えるのは自分だけだって思っ
      ているけど、神様だって使えるのは当たり前で、悪さをしない動物達にだ
      け聞こえるように、火山の噴火や、その他の天災を常に教えていたんだ。

       ……とまぁ、本来は人間に聞こえるはずのないものなんだけど、たまに
      ね、その降り注いでいる声を聞き取れるようになってしまう人がいるんだ
      よ。普通に考えれば喜ぶべき能力だよね?これから起こりうる天災を事前
      に知ることができるんだから。でも、その空から降り注ぐ声の情報は膨大
      で、声を聞けるようになった人はみんな精神を痛めてしまうんだ。
       だから、「声神さん貰い」って呼んでいたんだよ。
       じゃあなんで今はそう呼ばないのかって?この科学万能人間万歳ってな
      世の中で、誰がそんな迷信信じるってのさ?(笑い



風雪と夏深   投稿者:ジコマン   投稿日:2001/01/02(火)01時48分35秒   ■   ★ 

       5月17日

       黄色くくすんだ室内に煙がたゆたっている。
       タバコをくわえた男(名を積木風雪というのだが)はそんな霧のかかったよ
      うな室内で、つまらなそうに本を読みつづけている。
       そして突然本に栞を挟み、ふと顔を上げた。午後10時過ぎ。普段ならとっ
      くに帰っている時間である。そのまま本を置き、デスクの上にあった空のコー
      ヒーカップを持って席を立った。最後に一応もう一度口をつけてみるが、一滴
      たりとも雫を口にすることはできなかった。少しだけ残っていたコーヒーもす
      でに乾燥していたのだ。風雪は、ちょっぴり悲しそうな顔をしたが、それでも
      なんとかカップを片付けに向かった。
       風雪が新しいコーヒーを入れなおしていると、ドンドンドン。ドンドンドン
      !と激しいノックの音がした。

       ノックの主はソファに座ると少し安心したように話を始めた。
       「あたし、七瀬夏深って言います。今日この“浄霊センター”に来たのは…
      …なんて言ったらいいのかなあ。あたし、目に見えない人の声が聞こえるよう
      になっちゃったみたいなんです。それで恐くなっちゃって、こういうとき頼る
      のってやっぱりここであってるんですよね?」
       風雪は夏深のあまりに真剣な眼差しに気圧され、営業時間外であったが話を
      聞くことにしたのだった。
       「声の主はいつも決まっているのですか?」
       「はい」
       「いつ頃から聴こえるようになりました?」
       「一昨日の夜中からです」
       「一昨日の夜中は何をしていたのですか?」
       「えっと、寝てたんですけど、いつも見る変な夢をみて、それで起きちゃっ
      て、気分転換にでもってベランダに出てぼーっとしてました。そしたら突然…
      …」
       「何者かの声が聞こえた、と?」
       「ええ」
       「ご自身では何も思い当たるような事はないのですね?」
       「あたしが忘れてしまってるだけかもしれませんけど……」
       「先ほど、“いつも見る変な夢”とおっしゃいましたが、その夢の内容を詳
      しくお話いただけないでしょうか」
       「えっと、厳密にいうと、毎回同じ夢というわけではなくて、雰囲気に共通
      するものを感じる夢なんです。極端に原色を使われてるって言うか、なんかこ
      う……。」
       「なるほど、大体わかりました。それでは最近心霊スポットなどと呼ばれて
      いるところに行った覚えは?」
       「ありません。いつも通りの生活をしていたつもりです。」
       「普段から……なんといいますか、幽霊とかそういうものを見かけたりする
      体質なのですか?」
       「いえ……」
       「つかぬ事をお伺いしますが、夏深さんは精神に異常をきたした事はおあり
      ですか?」
       「……!?」
       ケラケラケラケラ
       不意に、風雪の声でも夏深の声でもない不気味な笑いが響いた。
       一瞬にして夏深の顔が青ざめる。
       「……どうかしました?」
       風雪が聞いてみても、夏深は黙ったまま身動き一つしない。
       暫くたってから、やっと夏深が口を開いた。
       「……何も、聴こえなかったですか?」
       「はい、何も。」
       「今、奴の笑い声が聴こえました。」
       風雪はタイミングが良過ぎる事に疑問を感じた。
       精神病の疑いを口にした直後に笑い声が聴こえたと言った。
       まるで精神を病んだ人間が自分の妄想を否定されるのを無意識に防ぐように。
       風雪はますます疑いを強くした。
       『夏深は自分の作り出した妄想に取り込まれたのではないか?』
       「あたしはアンタなんか必要としてないわよっ!!どっか行きなさい!行き
      なさいよ!!どうしてあたしにまとわりつくのよォッ!!どうしてよぉッ!!」
       風雪の疑いを振り切るように、室内に夏深の絶叫が響き渡った。


夏深と声神様   投稿者:ジコマン   投稿日:2001/01/03(水)21時39分09秒   ■   ★ 

       5月18日

       「まったくなんだってのよ。浄霊センターなんて胡散臭い看板掲げておいて、
       あたしをキチガイ呼ばわりするなんて。」
       ぶつぶつ言いながら夏深が歩いている。すでに日付は変わっていた。
       あの後、応急処置と称した変な儀式をされて帰されたのだった。儀式の間も
      声は常に聞こえており、それどころか声はその儀式自体を嘲笑し、夏深を嘲笑
      し、風雪を嘲笑していた。
       「また後日。」
       そう風雪は言っていたが、歓迎していないのは明らかだった。
       「まぁ、人間なんかどんなに信じたってそんなもんだ。」
       また声がした。
       「そうね。皆、信じて裏切られるのが恐くて、何もかも否定して生きてるの
      よね。契約書なんてその典型だし。はじめから相手が裏切ることを想定して、
      裏切った場合はどういう処置をしますよ。って脅しをかけて、それでなんとか
      精神を安定させる。それを“信じた”なんて安易に言ってみたりして。そんな
      人たちをなんの脅しもかけずに信じたって裏切られるだけよね。」
       夏深も声について特に気にした風でもなく答える。
       「俺の存在を認める気になったのか?」
       「認めるも何も、あたしにはどうにも出来ないのはわかったわよ。」
       「無理に口に出して答えなくてもいいぞ。周りには独り言言ってるアブナイ
      奴に見えてるみたいだからな。まあ、事実お前は独り言を言うアブナイ奴その
      ものだけどな。ククク」
       『は、早く言いなさいよ。』
       「わざわざ言わなくても、さっきの浄霊センターの一件で気付いたもんだと
      思ってたんだがな」
       『そういえばあの風雪って人には全然あんたの声は聞こえてなかったわね。』
       「……」
       『あんた、なんて呼べばいいの。』
       「好きに呼べよ。徹でも声神様でも。ケラケラケラ。」
       『ふぅん、なんだかわかんないけど、とりあえず徹ってことにするよ。それ
      で、その徹がなんであたしに話し掛けるの。』
       「お前は変な奴だからな。周りの奴なんか皆死んじまえばいいと思ってる。
      世の中の全ての人間と、その人間が生み出した文化をも嫌悪し、その中に居る
      自分すらも嫌悪してる。世の中に不満はある、でも自分はそれに対してどうす
      ることもできない駄目な“人間”だってな。どんなにがんばったって変えられ
      ない運命の楔に不満があるんだろ?常人にはない、大きな力が欲しいんだろ?」
       『それは……』
       「俺ならお前に力をやれる。お前が望むように、世界をどうとでも変えれる
      力を。」
       『あんた、頭イカれてない?』
       「ギャハハハハ。得体の知れない変な声が聞こえるような気狂いに言われた
      くねぇなぁ。この俺の声だって、全部お前の妄想が作り出したものかもしれな
      いんだぞ?」
       『………。』
       「あ?怒ったか?」
       『……さっきの話だけど、あんたの言う“力”って、あんたを消し去る事も
      できる?』
       「ああ、勿論だ。それに、お前の大嫌いな世の中全部をめちゃめちゃにだっ
      て出来る。俺を消すのだって造作もないさ。」


夏深と爆弾   投稿者:ジコマン   投稿日:2001/01/04(木)22時39分13秒   ■   ★ 

       5月24日

       世界の総てのものの色が褪せてしまった。
       黒いものも、赤いものも、青いものも、緑色のものも、黄色のものも、紫色
      のものも、全部全部白くなった。
       「こんなに明るくしちゃったら、でんこちゃん怒るかなあ。商売あがったり
      だ。って。くすくすくす。」
       やがて、光を放出し尽くした世界は、また漆黒の闇へと還る。
       もう2度と、色を持つことはないだろう。その瞳に、色が宿ることはないだ
      ろう。そこに残ったのは、二つ目の抜け殻。



夏深と徹1   投稿者:ジコマン   投稿日:2001/01/07(日)02時12分31秒   ■   ★ 

       ○月×日

       夏深は世界を上から見下ろしていた。空を飛ぶのは去年の夏に家族と旅行に
      行ったとき以来である。しかし、今回は前回とは少し違う。というか随分違っ
      た状況であった。飛行機やヘリコプターのような道具を使わず。何もしていな
      いのに空に浮かんでいた。そのことについての疑問は微塵も生じない。そんな
      ことよりも、世界を上から見下ろすことになって初めて夏深は気付いたことが
      あった。世界は自分であったと。夏深が居なくなったからといって皆の世界は
      何一つ変わらなかったが、唯一、夏深の世界が終焉を向かえたことだけは確か
      である。夏深の目を通して見る、薄汚れたつまらない世界は忽然と姿を消して
      しまった。今残っているこの世界は汚れてもいなければ、美しくもない。ただ
      そこにあって、ただその中で動植物が生活をしている。今の夏深はそれをみて
      もどんな感情も浮かばなかった。これこそが本当の世界である。

       夏見は改めて自分の家の周りを見てみようと思った。自然と身体はそちらへ
      向かう。こういう形で空を飛ぶのははじめてであったが、自然と何の違和感も
      なく飛ぶことができた。家の真上につく。自分の家を空の上から見下ろすのは
      もちろん始めてである。本来ならばなんらかの感情が起こるのが自然であるの
      だが、今の夏深はこの状況にあってもなんとも思わなかった。自分の部屋に近
      づいていくと窓ガラスを開けることなく室内に入れた。ひっそりと静まり返っ
      ている。自分の部屋を出て階段を下ってゆくと、1階の和室の一番広い部屋に
      人が集まっていた。全員黒い服を着ている。なぜかなにも声は聞こえないのだ
      が、夏深はなんだか気分が悪くなり、そこを後にした。他の部屋を回ってみて
      も、和室以外には誰も人の気配はなかった。夏深はもう一度自分の部屋に戻っ
      てみることにし、改めて階段を上った。

       夏深が部屋に入ると、部屋の隅に小さく体育座りをしている男の子がいる。
      外見は大体、中学生か小学生高学年といったところである。少し輪郭がぼやけ
      ていて、身体には何も着けていない。夏深は男の子を怖がらせないようにゆっ
      くりと近づいていった。


夏深と徹2  投稿者:ジコマン   投稿日:2001/02/20(火)20時23分34秒   ■   ★ 

       ○月×日

       「やあ、初めて会うね。こんにちは。」
       夏深が少年の側まで行くと少年から話し掛けてきた。少年の声だけはなぜか
      夏深にも聞き取ることができた。夏深も声を出そうと口をあけたが、もちろん
      そこから声が発せられることはなかった。沈黙が続く。
       「あ。そうだね。君は今ちょうど喋れないんだったね。ごめん。」
       夏深はただその少年の顔をじっと見つめるだけだ。
       「僕はね、本来ならもう役目が終わったから、出発してしまってもいいんだ
      けど、最後に君に伝えておきたいことがあって、ここに来たんだ。君は今どう
      して喋れないか、空を飛べるか、壁をすり抜けれるか、わからないことばかり
      でしょ。でも特に気になってない。それには大きな理由があるんだ。この世界
      と僕たちの繋がり、それを拒んだからだよ。僕もそうだった。」
       夏深は首を傾げる。空っぽの夏深が無表情に首を傾げる様は酷く異様であっ
      たが、少年はやはり淡々と話を続ける。
       「いまいちピンとこないか。じゃあ僕と君の関わりを思い出させてあげよう。
      僕と君は実は初顔合わせじゃないよ。僕は君を苦しめた“声”の主さ。君のお
      かげで声を取り戻すことができたよ。僕らはある種選ばれた魂なんだ。代々酷
      く無意味な役目を背負っている。厳密には君はこれから背負うことになるんだ
      けどね。僕から君へお役目交代だよ。君はこれから僕が君にしたようなことを
      誰かにしなければいけない。自分と似た雰囲気をもった人間を探し、その人間
      が常々持っている疑問や不満に答えを出させてあげるんだ。自分にとって世界
      が必要か必要でないか、まぁ、大体そんなものだけど。僕らはただそれを聞く
      だけでいい。あとは相手の答え次第。君のように世界を不必要と思う人であれ
      ば……わかってると思うけど、死んでしまうんだ。君が必要ないと思っている
      世界は君の目を通してみた、君の世界だからね。君が世界を不必要だと思うと
      いう事は、君が不必要だということになる。そしてこうして改めて主観のなく
      なった目で世界を見てもらうんだ。そうすれば本人も気付くからね。逆に、万
      が一世界を不要だと思わない人と出会った場合はそのまま身をひかねばならな
      い。次の人に声を掛けるんだ。つまり、僕らがしているのは汚い世界の消滅を
      手伝う仕事、世界の浄化だよ。あ、それじゃあ、僕はもう次の出産に紛れ込ま
      ないといけないから、もう行くよ。がんばってね。」

      owari



おまけ

  投稿者:    投稿日:2001/03/06(火)23時37分17秒   ■   ★ 

       子育てが下手な親が増える中、少年犯罪が起きればやれ、教育のせいだ、
      やれ社会が悪い。などとワイドショーで好き放題話し合っている様子を見
      るにつけ、面白い反面胸糞悪いんですが、そんな現状を少しでも打開する
      策を考えたので、なんとなく自己満足発散場であるここに吐き捨てておき
      ます。

       核家族化が進んで、親から子へ生活の知恵や子育ての方法、その他あら
      ゆるものが受け継がれにくくなった現在において、これを解決する策を思
      いついたので、ぜひこれを読んだ権力のある人間は実施してください。

       簡単なことです。これから子育てをする親に対して、子育てをするため
      の教育をするのです。しかも義務的に。子供が生まれた場合、その生まれ
      た子供を責任を持って育てる立場にある親権者のうち、どちらか一人に教
      育を受ける義務を与えればいいのです。そして、その義務を拒絶して自分
      勝手に子供を育てた場合は、将来その子供が犯すあらゆる罪について、そ
      の親も同罪とみなし、同じ罰を与えてやりましょう。

       このシステムを導入すれば、少しは「子供とどう接していいかわからな
      くて」なんていうふ抜けた言い逃れは出来なくなりますので、親としても
      もっと親たる自覚が芽生えるかもしれません。



@未来小説

 投稿者:蠅  投稿日:2000/05/25(木)20時40分09秒  ■  ★ 

      その日、僕は酷く疲れていた。
      まだ帰宅ラッシュには早い電車に乗り込み、
      座席に座ると静かに目を閉じた。

      ふと、身体に違和感を感じ、目を開けた。
      もうすぐ降りる駅だという事は、窓の外の風景で分かった。
      そして、違和感を感じた右腕の方を見た。僕は自分の目を疑った。
      そこには眠っている女の子がいた。僕の右腕をしっかりと抱えて眠る女の子が。
      周りの乗客は見て見ぬ振りだ。自分の顔が紅潮していくのが分かる。
      何だ?どういう事だ?何で僕の腕を?それより、この子は誰?
      考えても分かるはずもない。とりあえず、この子を起こす事にした。
      「あの、ちょっと?」
      女の子の肩を揺すりながら声をかけた。
      すぐに女の子は目を開けた。ちょっとつり上がった、大きな目がこちらを見た。
      彼女を動物に例えろと言われたら百人が百人「ネコ」と言うだろう、魅力的な瞳。
      同い年くらいだろうか、それともまだ高校生くらいだろうか。
      思わず色々考えてしまった。
      「あ、ごめんなさい」
      彼女は僕に謝ると、右腕を解放してくれた。
      いや、してくれるはずだった。
      しかし、彼女は予想外の行動に出た。
      僕の右腕を抱えたまま立ち上がると、駅に到着して開いた電車のドアの方へ向かった。
      当然、僕も同じ行動を取らざるを得なかった。
      為す術がないとはこういう事だろうか。何がなんだか分からなかった。
      ただ、彼女のネコの目が、「ついてきて」と訴えてる事だけは確かだった。


 投稿者:蠅  投稿日:2000/05/26(金)04時30分54秒  ■  ★ 

      結局、腕を組んだまま電車を降りる羽目になった。
      相変わらず周りの人間がこちらを見ている気がする。
      そりゃそうだろう、明らかに動揺している男と嬉しそうに腕を組んでいる女の子。
      とても恋人同士には見えない。
      改札の手前でやっと彼女は腕を放してくれた。
      助かった。あんな状況じゃまともに歩くこともできない。
      自慢じゃないが僕は女の子にあまり免疫はない。腕を組んだことなどあるはずもない。
      こんなにかわいい子と腕を組むなんて、僕には刺激が強すぎる。
      改札を抜けるまでに落ち着こう。

      無駄な努力だった。
      改札を出ると結局ぎこちない恋人同士になってしまっていた。
      「二人じゃ改札を通れないからね」
      なるほど。
      結局僕たちは駅前の広場(と言っても極々小さな何もないところなのだが)のベンチに
      腰掛けることになった。
      「で、いったい君は……」
      「あーっ! 」
      今までのことを質問しようとした僕の声を彼女の声が遮った。
      「ななな、何? 」
      見ると彼女は僕のリュックを指さしている。
      「これ……がどうかしたの? 」
      「そのキーホルダー、私とお揃い! 」
      彼女が指さしていたのはリュックではなくそれについている「どこでもいっしょ」のト
      ロのキーホルダーだった。
      彼女はポケットから携帯電話を取り出した。
      「ほらほら、見て! 」
      嬉しそうに言う彼女の手に握られている携帯のストラップにはトロがぶら下がっていた。
      「あ、本当だね」
      素っ気ない返事しかできなかった。展開の早さに戸惑ってしまう。
      それでも彼女は笑顔のままこっちを見ていた。つられて僕も笑顔になった。
      「ところで、どうして君はあんな事をしたの? あ、いや、その、別に嫌な訳じゃないん
      だ。ただ、どうしてかと思って……」
      僕はさっきできなかった質問を繰り返してみた。
      すると彼女は、満面の笑みを浮かべながらこう言った。
      「トロがお揃い、だから」
      全然説得力のない言葉だった。到底納得のいく答えではないように思えた。
      「それじゃあ、ダメ? 」
      それで、良いのかもしれない。そう思い始めていた。


 投稿者:蠅  投稿日:2000/05/27(土)00時14分37秒  ■  ★ 

      翌日、僕はバイトに行くため、電車に乗っていた。
      電車の中でも、バイト先の本屋に着いてからも昨日のことばかりが頭を巡っていた。

      彼女の名前はユリ。僕と同じフリーターで、昨日は新しいバイトの面接に行っていたらし
      い。
      「え? うん、ファーストフードのお店。友達がやってるから」
      「まだわかんないよ。明日くらいに連絡が来るみたい」
      大丈夫だよ、とありきたりの言葉しか出てこなかった。
      「祐弥君は何のバイト、してるの? 」
      「あ、僕は本屋。別に本が好きって訳じゃないんだけどね。ただ、なんとなく」
      本当のことは言えなかった。片想いの人が、そこでバイトしていたなんて。
      もっとも、その人はとっくにやめてしまっているのだが。惰性で続けているような物だ。
      1時間程話をしただろうか。僕は彼女の魅力に引き込まれていく自分に気付いた。
      「あ、もうこんな時間。私、帰るね」
      腕時計を見ながら彼女はそう言うと、手を振りながら駅舎の中へと消えていった。
      出会いも唐突なら、別れるのも唐突だ。目だけでなく体の中もネコなのかな。そんな事を
      ぼんやりと考えながら、僕も帰途についた。

      彼女のことで頭の中が一杯だった。仕事も手につかなかった。こんなことは初めてだ。
      「……すいません。あの〜」
      「え、あ、はい、何でしょうか? 」
      お客さんに声をかけられてることすら気がつかなかった。どうかしているな。
      「やっぱり祐弥君だ。ここでバイトしてるのね」
      「あ……」
      そこには、確かに昨日会った彼女、ユリが立っていた。
      「何で、ここが……? 」
      「家が近所なの。昨日、本屋でバイトしてるって言ってたからここにいたらいいのにな、
      って思ったら本当にいたの。会えて、良かった」
      とびきりの笑顔で、彼女は言った。こっちまでつられて笑ってしまうほど、彼女の笑顔は
      可愛らしかった。
      「今日、バイト何時に終わるの? 」
      「え、5時……だからあと1時間くらいかな」
      「その後、空いてる? 」
      「うん、空いてるけど……」
      また彼女に会えたうれしさをかみ殺しながら、言った。好きになったのかも、しれない。


 投稿者:蠅  投稿日:2000/05/27(土)20時05分58秒  ■  ★ 

      バイトを終え、急いで着替えると僕は彼女が待つ店の外に出た。
      やや薄暗くなった空の下、彼女は歩道の縁石に腰掛けつまらなそうに足下の小石を蹴って
      いた。だが、彼女は僕の姿に気付くとぱっと立ち上がり、こちらにぱたぱたと走り寄って
      きた。
      「ごめん、待った? 」
      いつから待っていたのか知っているのに、とりあえずそう聞いてみた。こういうやり取り
      を心の中で望んでいたのかもしれない。まるで恋人同士、その感覚が照れくさくもあり、
      嬉しくもあった。
      「ううん、待ってないよ。って、本当は知ってるくせに」
      イタズラっぽい笑顔を見せて、彼女は言った。
      「で、何か用事でもあった? 」
      「ううん、ちょっと一緒に歩きたいな、って思っただけ」
      はにかんだ顔も可愛らしい。もちろん断る理由などあるはずもなく、駅までの道を彼女と
      歩くことにした。

      少し風が出てきたようだ。時折吹く強い風に、彼女の肩までの黒髪がなびいた。
      「あのね」
      少しうつむきながら、彼女が話し出した。
      「昨日言ってたでしょ? バイトの面接の話。あれ、ダメだったんだ。先に面接に来た人
      に決まっちゃったんだって」
      「あ……、残念、だったね……」
      こういう時に普通の人なら気の利いた科白の一つや二つ、すらすらと出てくるのだろう。
      「でも、いいんだ。だって、いい物見つけちゃったんだもん」
      さっきの口調とは明らかに違う声、いつもの明るさに満ちた声で彼女は言った。
      「祐弥君がバイトしてる本屋さん、アルバイト募集してるでしょ」
      「え、うん」
      「私、祐弥君と一緒にバイトしたいよ。私と一緒じゃ、迷惑かな? 」
      思いがけない言葉だった。彼女と同じ場所で働く。それはつまり、彼女といられる時間が
      大幅に増えるという事だ。
      「ううん、全然そんなこと無いよ! それどころか大歓迎だよ! 」
      言ってからはっと気付いた。周りの通行人の視線がこちらに集まっている。
      「祐弥君、声、大きいよ……」
      彼女も少し驚いた表情を見せながら、小声で言った。
      だが、そんな普段なら赤面してしまうほどの恥ずかしさも、今は心の底からわき上がって
      くる喜びに打ち消されていた。


 投稿者:蠅  投稿日:2000/05/28(日)23時04分47秒  ■  ★ 

      翌日、彼女の願いは特に問題もなく叶う事となった。
      その本屋は駅からそれほど離れていないこともあり、絶えず人が出入りするなかなかの繁
      盛ぶりであった。それ故いつも人手不足に悩んでおり、彼女の申し出はまさに願ってもな
      い事であった。
      「君の、彼女? 」
      店長の問いに、
      「いえ、そんなのじゃないですよ。友達ですよ」
      と答えながら考えた。
      (彼女って言えたらいいんだけど……)
      今の僕たちの関係は端から見たら恋人同士に思われるのだろう。店長の言葉もその事を表
      していた。しかし、向こうはどう思っているのだろうか。好意的に思ってくれているのは
      分かる。ただ、恋人というのは相互的な感情で成り立つ物だ。告白というプロセスもない
      まま彼女だと公言するのには気が引けた。そもそも、向こうがただの友達と考えているの
      だとしたら、僕は少々妄想に耽っていることになる。それに気付いた時、僕は一人何か居
      たたまれない気持ちになり、平積みされていた本を意味もなく持ち上げてみたりした。

      彼女が初めて働くその日、運の悪いことに僕は休みの日であった。
      もっとも、その事が事前に分かっていたら休みをずらしてでも彼女と一緒にいることを望
      んだだろう。
      「私ね、明日からなんだ、バイト」
      前日の夜、それまで何度となく見たであろう着信番号を表示した携帯からその事を告げる
      彼女の声が響いた。
      「え、明日? 来週からって言ってなかった? 」
      「本当はそうだったんだけどね。頼んで早くしてもらっちゃったんだ」
      「僕、明日休みなんだけど……」
      「そうなの!? 失敗したなぁ。ちゃんと聞いておけば良かったね。驚かせようと思って
      黙ってたの」
      彼女の作戦は成功した。しかし、それによって別の意味では大失敗になってしまった。
      その大失敗が、僕に新たな作戦を生み出させるきっかけになった。


 投稿者:蠅  投稿日:2000/05/29(月)23時09分00秒  ■  ★ 

      ちょっと更新遅れます
      路線はこのままで行きます


 投稿者:   投稿日:2000/06/01(木)16時41分33秒  ■  ★ 

      片手間で創作なんかすんな


>   投稿者:蠅  投稿日:2000/06/04(日)01時08分56秒  ■  ★  ◆ 

      > > そもそも片手間でなければこのような所に書く理由など無い
      > 負け惜しみ(´ー`)カワイソウ 

      反論するのも大人げないとは思うがこれでも文筆で飯を食っているのだ
      これ以上の問答は無意味であろう 少々異業種に手を出したのが間違いだった


>   投稿者:蠅  投稿日:2000/06/04(日)11時56分39秒  ■  ★  ◆ 

      > 最後まで書いてないお前が何を言おうとも負け惜しみ以外の何にも取られないと
      > 思うが、文章で飯食ってる割にはそんなことも分かりませんか?

      書いてはある
      今までもだいたいに区切って貼ってきただけだ
      こういうところに貼るためにかなり短めに場面分けはしたが
      まあいい 別にこれで評価されようがされまいがかまわない
      望まれない物を示すのは無駄


>   投稿者:蠅  投稿日:2000/06/04(日)14時07分44秒  ■  ★  ◆ 

      > 何で勝手に一人で拗ねてんだよ(;´Д`)小学生かおまえは
      > おまえが普段どんな文章書いていようが知った事じゃないが、
      > @未来小説なんて作った時点では誰からも望まれてなかったんだから
      > ちょっと否定的なこと言われて言い訳モードに入って一体何がしたかったんだ?
      > 「僕にも昔こんな多感な時期がありましたね(^^;;
      >  これから先その女の子との関係がどうなっていくのか
      >  続きがすごく楽しみです
      >  応援してます頑張ってくださいね(^^)」
      > まさかこんなレスを期待していた訳でもあるまいに。

      自分でもどうしたかったのか分からない
      打ち切るきっかけが欲しかったのかもしれない
      よく考えてみたら人に見せて判断を仰ぐ気で書き始めたのかそうでないのかも不鮮明
      やはりどんな物でも信念を持ってやらねばならぬと自戒する次第

      >「僕にも昔こんな多感な時期がありましたね(^^;;
      >これから先その女の子との関係がどうなっていくのか
      >続きがすごく楽しみです
      >応援してます頑張ってくださいね(^^)」

      こんなのを心の奥底では望んでいたのかもしれない
      自分の心というのはよく分からない物だ



おまけ

  投稿者:    投稿日:2001/03/02(金)23時30分50秒   ■   ★ 

      【未来日記】
      3月3日(ひな祭り)
      夜遅く、ドキュソのヤスタカが家の近くまで帰ってくると、
      自宅は朱色に染まっていた。
      赤々とした炎の前に人だかりが出来ている。
      大急ぎで走り寄り、側に居た野次馬達に
      「25、6くらいのショートカットの女を見なかったか」
      と尋ねて回るも、誰一人見たという人間はいなかった。

      しばらく呆然としながら次第に崩れていくアパートを見ていると
      中から1人の消防隊員が出てきた。後ろから続いて担架が運ばれてきた。
      大急ぎで近寄り消防隊員に「若い女性ではないか」と尋ねると
      「そうですが、あなたはこちらにお住まいの方ですか」と聞き返された。
      ヤスタカは「そうだ。実は部屋に彼女がいたはずなんだ。
      しかしどこを見ても野次馬の中に彼女は居なかった。
      もしかしたらということは考えたくなかったが、
      早く無事を確認して安心したかったので一応確認に来てみたのだ」と答えた。
      「あなたのお部屋はどこでしたか」冷静に聞き返される。
      「あの、2階の一番隅っこの・・・」赤々と燃える右隅の部屋指を指しながら答えると、
      消防隊員はガクリと肩を落とし、姿をよく確認するように促してきた。

      ヤスタカは全てを失った。



 投稿者:   投稿日:2003/08/15(金)08時34分36秒 

      どもー。諜報員でーす。
      漏れらのアジアぎすぎす工作が上手くいっているようで喜ばしい限りですね。
      ただでさえEUとイスラム教と中国だけで鬱陶しいのに一国ですら鬱陶しい中国と、日本
      だの韓国だのが仲良くなると面倒ですからね。そのうえ北朝鮮が民主化したら更に面倒
      だよ。
      おまえら大人しく工作にはまっててくれよ〜。漏れも同僚ももう三日寝てないよ。
      つーか漏れらが過労死したら大変なんだから本国のお偉いさんももうちょっと休みくれよな。

      つーかさー日本人ほど騙しやすい国民はいないね(^^;ワラ
      ナショナリズムでまとまられてもコミュニズムでまとまられてもむちゃくちゃ面倒なんで一時
      期はどうしようかと思ったよ。まぁ漏れらの偉大な先輩たちがしっかりやってくれたけどねー
      左翼はさー、とりあえず内部でめちゃくちゃ分裂させて力を発揮できないようにしたんだけど
      いま面倒なのはずばり右翼ね。とりあえず大雑把に右翼層と保守層をわけなきゃな。
      んで今のキーワードは親米か反米か。これだね。
      これで大きく二つに分割できるんでだいぶ戦力落ちるよね(^^;ワラ
      んじゃまー頑張って喧嘩しちゃってください。でわ



 投稿者:   投稿日:2003/10/01(水)18時10分38秒  ■  ★ 

      オレは小さい頃、家の事情でばあちゃんに預けられていた。
      当初、見知らぬ土地に来て間もなく当然友達もいない。
      いつしかオレはノートに、自分が考えたすごろくを書くのに夢中になっていた。
      それをばあちゃんに見せては
      「ここでモンスターが出るんだよ」
      「ここに止まったら三回休み〜」
      ばあちゃんはニコニコしながら、「ほうそうかい、そいつはすごいねぇ」と相づちを打ってくれる。
      それが何故かすごく嬉しくて、何冊も何冊も書いていた。
      やがてオレにも友達が出き、そんなこともせず友達と遊びまくってたころ
      家の事情も解消され、自分の家に戻った。ばあちゃんは別れる時もニコニコしていて、
      「おとうさん、おかあさんと一緒に暮らせるようになってよかったねぇ」と喜んでくれた。

      先日、そのばあちゃんが死んだ。89歳の大往生だった。
      遺品を整理していた母から、「あんたに」と一冊のノートをもらった。
      開いてみると、そこにはばあちゃんが作ったすごろくが書かれてあった。
      モンスターの絵らしき物が書かれていたり、何故かぬらりひょんとか
      妖怪も混じっていたり。「ばあちゃん、よく作ったな」とちょっと苦笑していた。
      最後のあがりのページを見た。「あがり」と達筆な字で書かれていた、その下に

      「義弘(オレ)くんに友達がいっぱいできますように」

      人前で、親の前で号泣したのはあれが初めてでした。
      ばあちゃん、死に目に会えなくてごめんよ。そしてありがとう。。



     ぁゃιぃ怪談 死して屍 はきだめ 肝油菩薩 俺の日記


Remix からの転載をまとめたものです。


コンテンツ:びでメール エロゲ 森の妖精 ルーザー 湖畔論 スワティ 替え歌 (゚Д゚)ハァ?

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